過ぎ去った日々

 すこし勉強に疲れたから、なんとなく、ここにきてしまった。お外は、綺麗な春晴れの空がまぶしいのに、私は家の中に閉じこもって、本を読んで、ノートにまとめて、youtubeでサイードの過去の講演をみている。お尻には、根っこが生えてきそうだ、と思う。でも、これは私が選んだ道だから、文句は言わない、言えない。

 前回、親に見られてはいけないと、非公開にしたポスト。今思えば、なんてつまらないことをしているんだろう、と後悔ばかりが強くなる。だけど、やっぱり、怖い。どちらも大事にしたいから、だから、隠さなくちゃいけない、なんてねじ曲がっている。そうするしかない、と思うけれど、でも、それにも違和感を覚える。変な話です。(といいつつ、またこそこそと公開しています。だって、素敵な写真だから、いつでもみたいから。)

 

 実は、しばらく体調を崩していた。
 
 二月の初旬から、熱が出たり、下がったり。一日の中で、そういった熱の上り下がりが、何度も起きることがあった。微熱ではあれど、結構しんどくて、病院に行くことにした。そしたら、急に血液検査をすることになった。不安ではあったけれど、きっと大丈夫、なんでもないよね、と思っていた。結果が出たのは一週間後で、先生には「膠原病の疑いがある」と言われた。甲状腺刺激ホルモンと、抗核抗体の数値が、正常値よりも遥かに高くて、ぎょ、っとなった。「心配はしなくていいですよ」と言われながら、大きな病院で詳しい検査をするために、紹介状を書いてもらった。
 八王子にある大学病院に行くことになった。初診では予約ができないから、朝から急いで行って、一日中病院にいた。血液もたくさん取られた。最初、採血を担当してくれた男の人、すごくすごく上手だった。まったく痛みがなくて、感激してしまった。でもね、先生、白い服に、白いブリーフでは目立ちすぎてしまうよ、と心の中で思ってた。採血の結果が出るのを待って、午後の診察にまわった。二時間半から三時間くらい待った。その間にも、熱が上がって、眼球の裏側から、まんまるく、じんじん、と熱くなった。
 診察室に呼ばれて、入って行ったら、随分と若い先生だった。検査結果をみて、彼はうーん、と唸った。「あといくつか採血をしないとなんとも言えないなぁ」とドクター。その日は、結局何もわからないまま、再度採血をすることになった。二十分ほどベッドに寝かされ、安静にしたあと、ゆっくりと採血をした。もう、病院の中は結構静かになっていて、採血室にいたのは、私ひとりだった。採血をしてくれたのはさきほどとは別の人で、このときはちょっと痛かった。「名前、長いですね」なんて、いつも言われて、聞き飽きた言葉に対し、適当に相づちをうちながら、どんどん抜かれていく血の赤みに、ぼんやりした。これが、自分の中を流れていた液体なのか、と。こんなに綺麗な色の血液が、身体の中には流れている、と、不思議な気持ちになった。再診は、一週間後。
 再診の日、前日に食べたねぎのせいで、気持ちが悪くなっていた。いつのまにか、私はたまねぎもねぎも生で食べられなくなってしまった。大好きな野菜だから、悲しいけれど仕方がない。
 この日は、あまり待たされることなく、診察を受けられた。診察室に入ると、前回よりも高めの声で、出迎えられた。結果、甲状腺ホルモンの数値は、大部下がっていて、ほぼ正常値に戻っていた。「だいぶ数値が下がっていますね、今は正常だけれど、変動しているみたいだね」と先生。抗核抗体の数値は、前回の採血と同じくらい高かった。「慢性甲状腺炎かな」といいつつ、「膠原病の可能性があります。ただ、種類が多いから、専門の先生にかからないとわからないですね」とドクター。このとき、はじめてこの先生が膠原病の専門家ではないことがわかったのだった。結局、その日もよくわからないまま、また違う病院に行くことになったのでした。
 このときにはすでに、手の筋肉の痛みと、関節の痛みがひどくなっていて、一日に何度も痛みに襲われていた。不安だった。熱も相変わらずだったし、いろんな症状が出ていて、気分が晴れることなんてなかった。お金ばかりが飛んでいくし、今後のことで不安も多かった。そんな中で、色々な病院を点々とする不安。どうしようもないとわかっていながらも、イライラすることが多かった。
 最後に行ったのは、神奈川のある国立病院。ゼミでお世話になりっぱなしだった、尊敬してやまないSさまに、朝早くから車で病院に連れて行ってもらった。そのおかげか、あまり待つことなく、診察を受けることができた。やっぱり専門家が診てくれているということもあって、ようやく気持ちが落ち着いて、自分の症状を話すことができた。こういうことがおきていて、怖い、不安だ、と言えた。去年から治らない円形脱毛症のことにも触れ、写真をとってもらうなどした。これで、対処法が見つかるだろうか、と希望が見えた気がした。
 診察のあとには、いくつかの検査を行った、ガムを十分間噛んで、その間に分泌される唾液を集める、という検査。なんのためなのか、よくはわからなかったけれど、こんなに唾液ってでるものなのね、と溜まっていく唾液を眺めながら思った。そのガムテストのさなか、病院には急患が運ばれてきた。心臓が、ばくばくした。担架から、私の隣のベッドに寝かされたおばあちゃんは、泣きながら失禁してしまった、と小さくちいさく言った。おばあちゃんの声も、言い方も回りくどくて、なかなか人には伝わらなかったようだったけれど、おばあちゃんが泣き出した瞬間、なぜかそれがわかった。直感だった。あぁ、と思って、泣きそうになった。ガムの味が、急に薄れていくような気がした。
 そのあとは、またいくつも採血をした。担当した女性の方は、私の母よりも少し年上くらいで、明るい人だった。だけど、信じられないくらい採血が下手だった。腕をかたく縛られすぎて、手がびりびりと痛くなった。気づけば、左腕が真っ青になっていて、思わず「痛いです」と、言ってしまった。採血の間、ずっとずっと痛かった。終わってからも痛くて、心の中で、毒づいてしまった。笑い事じゃないよ、と。
 そのあとも、レントゲンを七回とった。受付をした男性が、あまりに失礼で、デリカシーがなくて、本当に嫌な気持ちになった。ワンピースを着ていったことも悪かったのかもしれないが、採血はやると思っていても、レントゲンをとるなんて思ってもいなかったから仕方がない。
 その受付の男性は、「下に何着てるんですか?Tシャツみたいなもの?」と聞いた。女性が着ているものなんてたくさんある、下着だってあるし、何枚もシャツを着ていた。ぎろりとにらまれ、私が返答に困ると、「脱いで準備をしてください。」と、それだけ言って消えていった。なにを脱げばいいのか、何を着たままでいいのかわからなくて、すみません、と再度聞きにいくと、その男性はあきれたような顔をして、手術の時に使うような、服を一枚差し出しただけだった。私の質問にはろくに答えてくれなかったので、こちらが質問の内容を変え、yesかnoで返事ができるような質問をしたら、ようやく答えてくれた。このワンピースは脱がなくちゃいけない、ということか。下に着ているシャツは薄くて、透けるのが恥ずかしかった。だから、上着を貸してくれたのはありがたかった。でも、もう本当に嫌な気持ちだった。
 幸い、レントゲン室で二人きりになったのは、その男性ではなく、女性の技師さんだったから安心した。あの人と二人きりなんて、死んでもなるもんか、と思ったから。手のレントゲン、足のレントゲン、胸のレントゲンをとった。女性の方がずっと親切で、細かい説明が嬉しかった。私が着替えをしているとき、他の女性の技師さんが次の人に説明をしていたのが聞こえた。何を脱いで、何を着たままでいいのか、優しく、細かく説明をしていて、いいなぁ、と思った。こういうとき、ぶっきらぼうで優しくない言い草の男性には腹がたつ。アンラッキーだっただけだけれど、それにしてもひどい。でも、もういいや。何度愚痴っても、あの人には届かないし。
 検査結果が出たのは、その更に一週間後。この頃は、つねに手足が痛かった。本当に怖くて、検査結果が出ることが嫌だった。聞きたくないことを聞くことになるかもしれない、とそればかりが怖かった。その日は、つれあいが代休をとって、一緒についてきえてくれた。朝から二人で緊張して、病院に向かった。結果から言えば、今回の検査は全て「陰性」だった。つまり、なんの問題もなかった、ということになる。手足の痛みはあれど、甲状腺ホルモンも正常値に戻っていたし、あれほど高い数値を示していた抗核抗体の数値までもが、正常値に近づくくらい下がっていて、先生は嬉しそうに「なにも異常はないです」と言った。
 よかった、と心底思った。だけど、それならなぜこんなにいろんな症状が出てるの、と不安にもなった。だけど、そんな私の不安とは裏腹に、先生は明るくて、晴々した面持ちで、それに微妙に傷ついたりもして。ただ、これで安心していい、というわけではなさそうだった。「今は異常がない、とは言っても、明日はわからない。だから、定期的に検査をする必要はありますね」と先生。急に真面目な顔になって、そんなことを言う。結局、痛み止めを処方され、次回の予約を取り付けた、というのが今の状況だ。検査にかかかった三万円を越えるお金も、不安や心配も、どこへいったのか、どう片付ければいいのかわからないまま、ちゅうぶらりんとしている。

 と、こんなことが、いろいろ起きたのです。自分のための記録とはいえど、読みかえしてみると、なんにもはっきりしていなくて、嫌な気持ちのままでいる。でも、痛みの改善法をいくつか教えてもらったから、それだけでも実践していくつもりではいる。

 休憩のために日記を書こう、と思ったのに、いつのまにか真剣になってて、逆に疲れちゃった。またお茶を飲んで、少し体操をして、勉強しよう、っと。

Comments

Popular Posts