「会話のない読書会」@fuzkue




 先日、初台にあるfuzkueさんで「会話のない読書会」に参加してきた。

 実はごくごく近所に住んでいるのに、なかなか立ち寄る機会がもてなくて、最近好きになったアンソニードーア(Anthony Doerr)の力を借りて、漸く重たい腰を上げたという感じ。



 ドーアの本はまだ、" The Shell Collector " (邦題『シェル・コレクター』新潮クレスト・ブックス)しか知らなかったくせに、語りから溢れ出す色彩に胸を鷲掴みにされてから、勝手にドーア好きとか思ってたわけで、今回の課題図書(?)は、『すべての見えない光』だったから、これは行くしかないって、思い立ったわけです。

 読書会というと、だいたいは読んだ本について語り合うという時間があるものなんだけれど、わたしは読み終わった本について、すぐに感じたことを口にするのがすこぶる苦手だ。講演会やなんかの質疑応答でも同じ。多分、頭の回転が遅いことや、咀嚼するのに時間がかかるんだと思う。すごく興味があったり、考えていることはあるのに、なかなかすぐには言いたいことが出てこない。だいたい、終わってしばらくたってから、いろいろ湧き出てくる。そういうタイプの人だ。だから、喋らなくてもいいというのは、それだけでほっとするというか、そういうの待ってましたっていう感じだった。
(人にはよく誤解されるんだけれど、わたしはひどい人見知りだし、なかなか人と馴染めない。と言いつつ、喋らないといけないとなると、変に空回りしたり、いらんサービス精神でべらべら喋ったり、自分の意思とは関係なく頑張ってしまうから、ちっともたのしめなかったりするんですよ。そういう面があると、イベントごとって大変だったりするわけです。コミュ障なんで、ほんと。)



 で、本題。
 「会話のない読書会」は非常によかった。なんというか、自分の時間を、これほど読書のために割くって普段していなかったと思って、とても気持ちい時間だった。わたしの場合、出勤時間に読書をすることが多くて、長くても15分前後の時間の間に途切れ途切れに物語を楽しむことが多いし、たまに夜寝る前に本を読むこともあるんだけれど、なんだかそれも集中できなかったりして、ゆっくり2時間半くらいたっぷり読書に費やせるのは幸せだった。



 わたしはお店の隅の広いソファ席に座ったんだけれど、ラッキーなことにお店全体を見渡すことができて、本を読みつつ、人々を観察したりもしてしました。じっくり読みふける人もいれば、途中で雑誌をめくる人や、携帯やらスマホやらを触る人、まあ、わたしのようにちらちら周りを観察している人もいるんだけれど、各々がそれぞれの時間を楽しんでいるというのが良かった。話をしていなくても、同じ場所で似たようなことをしているだけで、一体感って生まれるんだなとか、ぼんやりしながら思ったり。あと、各々が独立してぞれぞれの世界に向き合うっていうのが本当に心地よかった。あれなんなんだろう。店主の阿久津さんはグルーヴィーって言っていたけれど、そんな感じなのかな。

 あ、もちろん本も読みました。わたしはあえて、fuzkueさんで読み始めようと思っていたので、まったく手付かずの状態から読み始めたわけなんだけれど、ドーア作品って、一瞬で世界に入り込めるわけじゃなくて、ちょっとだけもやもやしながら手探りしながら読み進める感じなんだよね、最初。(わたしだけかも?)でも、徐々に物語が体に馴染んでくると、ページをめくる手がとまらなくなってくるわけで。今回の読書会は、ちょうど手が止まらなくなりはじめたところで一区切りという感じだったから、時間的にもちょうどよかったんじゃないかしらと思ったり。

 個人的には、fuzkueさんの「どうぞご自由に」というスタイルがとても気に入ったんです。始まりもなんとなくで、終わりもそれぞれのタイミングで、人に合わせなくてもいいっていうのが、本当に心地が良かったし、メニューにも来る人に「気を使わせない」ための工夫が凝らしてあって、最初はよくわかっていなかったけれど、帰りしなに心にあったのは、画期的なシステムだなっていうこと。よくよく考えて作ったシステムなのもよくわかったし、これだけの思いがあれば、この先もきっとうまくやっていけるんじゃないかって、なんとなく思ったり。

 次の読書会はパスしようと思っているんだけれど、本当はまたすぐにでもfuzkueさんに行きたい気持ちでいる。あのときの贅沢な時間の過ごし方は本当にくせになるし、忙しい人にこそ意識的に読書の時間がとれてすごくいいと思う。自分へのご褒美として、今後もお店に通おうかなって思っている。



 余談ではあるのだけれど、わたしが頼んだ「くきほうじ茶」も「鶏ハムのサンドイッチ」も美味でした。久々に飲んだほうじ茶があまりに美味しかったから、ほうじ茶を買いに行って、家でもほうじ茶を楽しんでいます。

 もう二回目の読書会の日程も決まっているそうで、ええなと思いながら、次はいつお邪魔しようかってそんなことばっかり考えています。素敵な時間でした。


 今回の読書会のために、消音カメラを導入し、隠れてパシャパシャさせていただきました。

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