白い風が眠る場所



 すとん、と落ちるように季節はめぐってきた。朝の光、風の冷たさ。一番好きな季節の香り、色。すとん、と不安が足下に落ちて、粉々になって、風に飛ばされていくのが見えるようだった。つま先から頭皮まで、風がさらさらと体に触れていく。正面から吹きつけてくる、やさしい風に身を任せ、思わず振り向きたくなるような日だった。ふりかえったら、大切な人がそのさきにいるような、そんな一瞬の淡い幻想。いや、幻想ではなくて希望なのかしら、とふと思う。


 そして今、夜の七時。夕飯も摂り、ぼんやりとひとりの時間を満喫している。どっぷりと、この穏やかさに浸る。網戸とカーテンだけを閉めた窓から、ひんやりと風が吹き込んでくる。静かだ、と思う。もやもやと、まとわりつく「あのなにか」がない、まっさらな状態だ。そして、ぽやんと思いを馳せる、飛ばす。遠くに暮らす、あの人はきっと、今も机に向かっているのね。そんなことを思いながら、透明のコップについだ牛乳を飲む。ごくり。

 多分、今夜も私はワンピースで眠る。ひとりだけど、ひとりではないベッドに寝転んで、シーツのしわの数を数えるんだよ。互いが眠りにつくまではね。それまでは、私も机に向かって、本を開くよ。話の種がつきぬよう、日々勉強しようと思うのです。

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