冷静からはほど遠い距離

 実家に戻ってから、冷静になれない日々が続いている。恋人のせいでもなく、私のせいでもない。そして多分、周りの人のせいでもないけれど、とにかく不安だ。不安になった原因はわかっている。母に、恋人との関係を告白したことが原因になっているのだ。母には、わかってもらえる、と信じていた。頭のいい人だし、とても優しい人で、私はずっと彼女を尊敬していたから。だから、私がいうことは、わかってくれるだろう、と思っていた。だけど、その予想は大きく外れた。
 母は、私の選択を認めてはくれなかった。ここには直接書きたくはないようなことを、たくさん言われた。一番わかってもらいたかった人、理解してもらいたかった人に、わかってもらえなかった。その悲しみは、想像を絶する。母には、また精神科に行け、と言われた。今まで、たしかにそう言われたことに対しショックは受けてきた。だけど、その言葉を聞くと、なんだかどこかで笑けてきたもの事実だった。だけど、今回はそう言われても、笑えなかった。ただただ、深い絶望しかみえなかったし、感じられなかった。
 母のせいで、とは言いたくはない。母も、彼女の価値観のうえでは、正しいことを言っているのだろう。だけど、その一言一言が私を切り刻んで、追いつめていることを、彼女は知らない。私は、傷ついた、と言うべきなのだろう。だけど、それを言う体力がなかった。私には、浴びせられた言葉を、聞くことしかできなかった。今は、もっと言い返さなかったことを後悔している。だけど、あのときの私に、なにが言えたのだろう。これ以上ひどい言い争いにならないために、必死でこらえていた。涙は流れたけれど、大声は出したくなかった。でも、やっぱりきちんと母と向き合うべきだった。我慢せずに、全部吐き出しておくべきだった。飲み込んでしまったものを、再度外に出すのは怖くて、怖くて、どうしようもない気持ちでいるんだ。
 恋人と幸せになりたい。ただそれだけのことなのに、こんなに反対されるなんて。今の私は、裁判の日をまつ犯罪者のような心境だ。冷静からはほど遠い。そのうち、母の詰問にあうのだろう。父の前で、「さぁ、あなたがなにをしたのか白状しなさい」と言われ、断罪されるだろう。たとえ悪いことはしていなくても、私が正しいと思って選択し道でも、母はそうやって私を追いつめるに違いない。
 
 今日も、母には用事があった。電話をしたときも、用件だけ言って、逃げるように電話を切った。あまり長話はしたくなかった。これほどまで、母を怖いと感じたことはなかった。ここまで、母から逃げたいと思ったことはなかった。だけど、それでも私は、悪いことをしてはいない。ただ、好きな人と一緒にいたいだけのこと。そんな当たり前のことが、なぜ許されないんだろう。人を裏切っているわけでも、欺いている訳でも、傷つけているわけでもない。それなのにね…

 今夜は、穏やかな気持ちで眠りたい。そう願っても、母に言われた言葉は、頭から消えてくれない。いくら消えなくても、私は誰も恨みたくはない。だから、楽しいことを考えよう。やらなくちゃいけないことを考えよう。彼の素敵なところを考えよう。悲しいことは考えてはだめだ。飲み込まれてしまうから。これ以上、暗い気持ちになってはいけないから。

 私の未来は、きっと明るい。

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