あたたかい休日

 調布で電車を降りた。駅の外に出るのは、三年ぶりだろうか。この三年の間に、様々な人間関係がふるいにかけられた。「知り合い」との付き合いは減り、「友人」との付き合いに集中するようになった。調布には、仲が良かった人が、何人か住んでいた。だけど、今はただの知り合いだ。三年は、様々な人間関係が、生まれたり、消えたりするのには十分すぎるほどの時間なのかもしれない。消えてしまった関係を思うと、なんだか寂しくなるような、でも「どうでもいいかな」と思う。記憶は消えていないのだから。出会いも別れもあるのが、私たちの人生。なんて、こんな大げさなことを書くつもりはまったくなかったのだけれど。
 調布では美味しいお好み焼きを食べた。私は、チーズ餅入りお好み焼き。つれあいは、シーフードのお好み焼きだった。鉄板で、お好みソースをじゅうじゅうさせながら食べると美味しい。お店でお好み焼きを食べるのは初めてだったから、とても緊張したけど楽しかった。そばめしというものも食べた。私の食文化のなかにはなかった一品。意外と美味しくて、今度家で作ってみようね、と話す。
 ぶらぶら歩いて、少しの間ショッピング。私は、革製品ばかりに眼がいってしまう。ずっと欲しかった万年筆を見つけたけれど、すぐには必要ないと思い、我慢することにした。今は、生活の方が大事だ。喫茶店でアイスティーを飲んだ。文房具屋巡り、楽しかった。
 家では、あたたかいヴァニラティーを飲んだ。夕飯は軽めにお味噌汁。本日のお味噌汁の具は、かぶとわかめとなめこ。私はなめこのお味噌汁が好きだ。二人分のご飯を作るようになってから、お味噌汁の出番が増えた。前よりもお味噌汁が好きになった。このあと、あたたかい梅酒と冷たいアイスを、ほかほかのおこたの中で食べようと思う。

 ふと考える、今までの大学生活のこと。秋になると、それだけで憂鬱になった。紅葉が始まると、それだけで憂鬱だった。目の前に、冬の寒さが迫って来ている、と思うと、どうしようもない気持ちだった。だけど、今年はそんなことはない。あたたかい家にいるせいかもしれない。私の下宿先は、いくら暖房をつけても寒かった。靴下を何枚重ねても、上着を何枚重ねても、毛布を何枚重ねても、どうしても寒かった。寒さが骨身にしみた。だけど、つれあいの部屋は、暖房をつけていなくても暖かい。この部屋にいると、それだけれ気持ちが落ち着く。おこたもある。寒さが鬱の原因かな、とはなんとなく感じていたけれど、今はそれを確信している。小さくて、音のしない、ひとりぼっちの寒い部屋。それが私の世界だった。今は、そこから脱出して、日々暖かい部屋で生きている。それって幸せなこと。横にいるつれあいの存在も、私にはとてもあたたかい。こんな冬なら、何度でも過ごせるよ。そんなことを、ぼんやりと思う。今日も、暖かいベッドの中で眠ろう。深い、深い、眠りに、身も心も沈めて、新しい一週間に備えよう。卒業論文の締め切りも目前だ。それが終わったら、ひとまずは心を落ち着けよう。そして、先のことを真面目に考えよう。私一人の人生ではないのだしね。

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